編集者活動日記

2018年
年明け某日

筒井さんに同調して、太宰なんてという意識にはなっていた。
ライター/編集者・月岡 誠(アピックス)

仕事場の月岡さんの周りには、本人の姿が見えないくらいに本の壁ができていて、
忙しさから察するにほとんど読めていないと思うし、月岡さんが生きているうちに
全部読めるかどうかも分からないなと思っていつも見ている。
買って読んでいない本というのは私にももちろんあるけれど、そういうレベルではない。
事務所にいらした方は、月岡さんがいる一角を見て「引っ越しですか?」と聞く。

−−−−読みたいというより教養として「押さえておく」という意識で買ってることもあるんですか? 漫画ではそうしてるでしょう。

本はそこまでやらないね。無理だもん。新聞の書評を見て、義務感で買うことはあるよ。思想とかの本で時代を画してます、という紹介をされると、読んでおかなきゃなとは思う。

−−−−読める見込みがなくてもそんなに買っておくの、どうして?

誰かが書いてたんだけどね、買うと、前書きくらいは読むでしょう。それに意味があるって。あとがきも読む。

−−−−(代表の岡田)読む時間とればいいじゃん

だね。

−−−−仕事と関係なく買うのはどういうジャンルなんですか。(読むのは、とは聞かない)

好きな作家でずっと買ってるのは……最近随分亡くなったけど、生きている方は、関川夏央、高橋源一郎。筒井康隆は書かなくなっちゃったし。海外は、カート・ヴォネガットとリチャード・ブローディガン。これまで出ているのはほとんど買ってきたから。最近のは読めていないけど。好きになった女優の写真集とかも素直に買う。

−−−−子どものころはどんな小説読んでいたんですか?

少年探偵団(江戸川乱歩)読んで、ホームズ読んで、エラリークイン読んで、小学校4年か5年で大河ドラマが国盗り物語だったから司馬遼太郎読んで、中学入ってSFに行ったんだよね。

−−−−純文学に全然行かなかった。

筒井康隆が、SFは、賞は獲れないわ、「人間が描けていない」とか言われるわで、純文学を憎んでいた、私小説をとくに憎んでた。それに同調したから、太宰なんて、という意識にはなっていた。

−−−−(小学校時代はスポーツで忙しかった岡田)小学校の時っていつ読むの?

スポーツやらなかったから、帰ってきて青春ドラマ見て、それから有り余った時間に本を読んでた。塾も行かなかったし。小学生の時にSFを読んでいたんだよね。筒井康隆、小松左京、星新一とかを。あと眉村卓とか。筒井さんがよく文学に対する、とくに「私小説」という分野について批判していて、そこに肩入れしていたので、いわゆる純文学という王道から外れたところを読んでいるんだぜ、という意識は確かにあった。

−−−−でも月岡さんっぽく言うと「漱石押さえてない」とかいうことを恥ずかしいというのはなかった?

うん。なかった。SFの方が上だと思ってた。司馬遼太郎で歴史を読んでいるので、あとはSF。めちゃくちゃだね。恋愛ものが全然ダメだったからね。恋愛するまで読まなかったから、読み始めたのは社会人になってから(笑)。三島は、『仮面の告白』を読んで変態だと思っちゃったからやめちゃった。偉い人だという認識はあったから。『金閣寺』とか『豊饒の海』とかを読んでいれば違ったかもね。

後半に続きます