案内文01
「自ら挑戦することの大切さを教えてくれる図書」
高校図書館司書・岩崎東里
『虹色のチョーク 働く幸せを実現した町工場の奇跡』小松成美
「彼らこそ、この会社に必要なんです」社員の7割が知的障がい者である“日本でいちばん大切にしたい会社”を、描いた感動のノンフィクション。
「人は働くこと、人の役に立つことで幸せになれる」
この言葉は一番心に残ったフレーズだ。自らの経験でも言えることだが、自分の仕事に誇りを持って働くことは、生涯において大切な糧となる。だからこそ、周りの人たちを支える優しさを持ち続けてほしい。それと同時に、自分自身も大切にしてほしいという想いを伝えたいと思い、この本を紹介した。
この神奈川県川崎市にあるチョーク製造会社・日本理化学工業株式会社は、昭和12年に小さな町工場からスタートした。障がい者雇用に力を注ぎ、全国から注目を集め続けている。虹色に輝く7本のチョーク。そこには作り手の誇りや働く喜びが詰まっている。
この会社を知ったのは『日本でいちばん大切にしたい会社』を読んだのがきっかけ。一人ひとりを大切にしてくれる姿勢とみんなが日本理化学工業株式会社で働く喜びを感じているということが素晴らしい。
昨年実施した1年生の図書室体験で、商業科の生徒に向けて、この本の魅力や印象深いエピソードを紹介した。この会社の人気商品であるキットパスは窓に絵が書け、水で消すことができる。特に、日本理化学工業株式会社の社員がランチタイムに食堂の窓に絵を描くことを楽しんでいる様子が本にも写真付きで掲載されており、アットホームな雰囲気が魅力的だ。
働くことによって、得られることは、「人に愛されること、人に褒められること、人の役に立つこと、人に必要とされること」であるというメッセージを心いっぱいに感じながら読んでほしい本である。
「(本校の)高校生たちには、本を読む楽しさはもちろんのこと、本を読むとはどういうことなのか。しっかりと自分と向き合う「読書力」を身に付けてほしいと思います。本のページにふせんやアンダーラインを引いて読むと、さらにその文章が自分のものになり、著者の考えていること、また、自分が伝えたいことも明確になります。特にこの本は、この方法で読み進めるとさらに奥深いものになると思います」と岩崎先生は話す。
あらすじ/『虹色のチョーク 働く幸せを実現した町工場の奇跡』小松成美 幻冬舎 2017年
チョークの製造会社である日本理化学工業(株)社員数の7割を占める知的障がい者が、日々の業務に向き合う姿を描いたノンフィクション。障がい者雇用の理想と現実、同社の思い、同社での勤務が社員たちの家族にもたらしたものを、著者が3年半にわたる取材をもとに描き出した。会長、社長、社員たち本人、社員の家族へのインビューと、製造現場のドキュメンタリーによって構成されている。
案内者プロフィール
岩崎東里(とうり)。1985年生まれ。図書館司書。2012年度より兵庫県播磨高等学校(姫路 私学 女子校)に勤務。学校図書館問題研究会兵庫支部会員・全国会員。本を楽しむこと、映画鑑賞、雑貨屋さんめぐりが好きで、図書室にディスプレイする雑貨は「NATURAL KITCHEN」がお気に入り。一人ひとりに寄り添った図書館づくりを目指して奮闘中!
書籍情報
『虹色のチョーク 働く喜びを実現した町工場の奇跡』(2017年5月発刊)
幻冬舎から販売中。