案内文01
「ある意味コストパフォーマンスはよくないけれど」高校教諭・北村敬良
『プチ哲学』佐藤雅彦
高校生は「どう思う?」という問いに弱い。小説や詩について授業をしていて、「どう思う?」と尋ねても、すぐに「分かりません」という答えが返ってくる。確かに、「どう思う?」なんていう発問の仕方がダメなのだと言われればそれまでなのだけれど、もう少し「あれこれ考え」てもらいたいなと思う。仕方ないので「模範的な」考えを板書すると、それをノートに写して試験に備える。テストを返却しても、解説は聞いていない。正解だけを聞いて採点間違いが無いかだけを必死に点検するだけ。流行りの「アクティブラーニング」でそこを何とかしようとするのだけれど、思いどおりにはなかなか・・・。
『プチ哲学』だから、早い話が「いろいろなことをちょっとだけ深く考えてみる」と言うこと。その内容は、百聞は一見にしかずで、以下のとおり。
筆者はこの漫画(絵も筆者の手で描かれている)の次のページでこう述べる。
「この2つの漫画に共通していることは、最終的な「結果」が目的なのではなく、好きな人と一生過ごす過程や、念願のバナナをムシャムシャ思いっきり食べる、その経過が目的であったということです。一般的には、『結果』はとても大事です。(中略)しかし、それに反して、この漫画のように、結果だけでは意味をなさない事柄も、日常には少なくありません。」
まあこんな調子で、全31回「いろいろなこと」について、漫画と筆者の解説で「なるほどなあ」と考えさせられる1冊。最後まで読むのにそんなに時間はかからないので、ある意味コストパフォーマンスはよくないけれども、また、「哲学」なんて言葉がタイトルに付いていて敬遠されそうだけれども、中高生には楽しく読めるはず。
さて、私も高校生の愚痴ばかり言っていないで、授業の仕方についてあれこれ考えよう。
あらすじ/『プチ哲学』佐藤雅彦
ヒットCMの制作に数多く携わり、NHK Eテレの「ピタゴラスイッチ」監修や「おかあさんといっしょ」内の「だんご3兄弟」の作詞・プロデュースなどを行ったクリエイティブディレクター・佐藤雅彦氏の著書。世の中のさまざまな概念──「想像力」「時間」「無垢」「価値のはかり方」などについて“ちょっとだけ深く考えてみる”ことを提案してくれる。(少女向けカルチャー誌として伝説的な存在である雑誌『オリーブ』の連載の書籍化)
案内者プロフィール
北村敬良。昭和33年7月5日神戸市生まれ。東京での大学4年間以外はずっと神戸に住み、神戸の街をこよなく愛している。私立の女子高校で国語を教えながらマナーや礼儀の授業も担当。妻との2人暮らしだったが、2年前からトイプードルを飼いだした。犬の態度から推察すると、私の家での序列は3番目。趣味は、映画鑑賞、旅行。死ぬまでには実際のオーロラを見てみたいと考えている。
書籍情報
『プチ哲学』(2000年マガジンハウスから発刊)。
2004年に書き下ろし「プチ哲学的日々」を加えて中央公論新社から文庫化。単行本、文庫本ともに発売中。